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性行為感染症
性行為感染症・性感染症はSTD(Sexually Transmitted Desease)・STI(Sexually Transmitted Infection)等の表現もあります。
性感染症の増加が叫ばれていますが、HIV感染症(エイズ)のマスコミ報道が少なくなったためか、若い男女に危機感がなく、無頓着な反応に驚くこともあります。あまり報道されない現状の中で、HIVは少しづつ増加しています。現在は男性同性愛者の間がまだ多いですが、いずれ異性間で爆発的に増える可能性があります。学校教育や医師、家庭での指導が望まれます。
また、淋菌性尿道炎が泌尿器科の重大疾患で苦労していた時代があります。抗生剤の無い、そのころの患者さんででしょうか、糸のように細い尿道狭窄で受診されるお年寄りもおります。抗生剤の恩恵で淋菌性尿道炎は静かになったかにみえますが、最近は診察室で出会う淋菌は耐性菌が非常に増えました。性感染症は時とともに変化します。
全ての性感染症に注意して欲しいのは、感染の可能性のある相手も治療して欲しいということです。
性感染症につき下記に記載します。予防のための知識となれば、幸いです。
性器クラミジア感染症
クラミジアはこの20年で感染者の多いことが明らかになった。その理由は正確に検査できるようになったことと、世界的な性風俗の解放(特に10代)、感染に対する無知、無防備な性交渉がある。
男性のほうが女性より感染者が多いと考えられていたが、調査で女性の方が多いことも明らかになった。
女性感染者は、年齢別では20〜24歳が一番多く、次に15〜19歳、そのあと25〜29歳とつづいている。
性感染症を引き起こす病原体、クラミジア-トラコマティス(Chlamydia Trachomatis)により生じる感染症には以下のものがある。
女性性器感染症
女性性器感染症では初期感染に症状がなく、一定の潜伏期の後にも症状が現れることが少ない。このため治療する機会を持たないと、子宮から卵管、腹腔内に感染が広がる。子宮付属器炎や骨盤腹膜炎のような炎症症状を起こして初めて感染を自覚する。また長く感染が続き、数ヶ月以上つづくと場合によっては肝周囲炎まで炎症が波及することがある。このときはきわめて激しい下腹部痛や上腹部痛が出現する。
検査は子宮頸管の擦過検体や膣分泌物を酵素免疫法や核酸増幅法、LCR法などをおこなう。女性は尿検査ではクラミジア検査は不適当。血清診断では感染し1〜2週間後にIgG抗体が陽性になり2〜3ヵ月後にIgAS抗体が陽性になる。このため感染直後では陽性にはならない。またこの2つの抗体は治療により治癒しても陽性のまま存在するため感染や、治癒判定の手段にはならない。
男性性器感染症
尿道炎では潜伏期間は1〜3週間で尿道分泌液はさらさらして少ない。、排尿時に痒い程度の自覚症状にとどまることがおおい。また精巣上体炎(睾丸に隣接するもの)の多くがクラミジアによる。
検査は膿または尿の培養、抗原検出法、遺伝子診断法(PCR法、LCR法、DNAプローブ法)がある。
咽頭感染
オーラルセックスにより咽頭からクラミジアを検出することがある。女性性器からクラミジアが検出される場合は、無症状でも10〜20%は咽頭からもクラミジアが検出される。
淋菌感染症
淋菌は高温や消毒液に対し抵抗力が弱い細菌で自然界には存在せず、淋菌感染症患者にみに生息する。性交または性交類似行為による直接感染である。男性については性風俗産業によるオラールセックスにより増加している。
男女差は男性が女性の5〜10倍多い。
尿道炎
感染機会から3〜7日の潜伏期間の後発症。外尿道口からの黄色粘稠な膿の排出と排尿痛が見られる。
クラミジア尿道炎より症状は強い。
尿道炎が持続すると尿道狭窄になることがあり、また両側精巣上体炎になると男性不妊にな可能性がある。
子宮頚管炎
典型例では膿性帯下(おりもの)がみれれるが無症状のことも多い。尿道炎を起こし排尿痛を生じたり、バルトリン腺炎、直腸炎を起こすこともある。子宮頚管に感染した後、治療がおくれると、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎に進展し、発熱。下腹部痛をおこす。
尿道炎、子宮頚管炎の検査はどちらも感度の高いPCRやLCRなどの遺伝子検査をおこなう。男性の場合は尿または膿を検体として、女性の場合は子宮頚管や膣分泌物を検体とする。
淋菌は薬剤耐性を獲得しやすい菌である。ペニシリン系、テトラサイクリン系、キノロン系の耐性が急増しており。内服薬では治癒しない患者にもしばしば遭遇する。
不完全な治療がなされた場合、慢性化することもあり、感染源となり、感染者の増加をもたらす。また、慢性化した尿道炎は性交や飲酒で再燃する。そのため有効な投薬が望まれる。
治療には、内服薬も用いられるが、ノイセフ1g静注やロセフィン1g静注 単回などが有効である。
非クラミジア性淋菌性尿道炎
クラミジアや淋菌ではない微生物による尿道炎。マイコプラズマ属の細菌やウイルスなどが考えられている。
症状はクラミジア尿道炎に似る。
治療は、ビブラマイシン、ミノマイシン、クラビット、オゼックス、クラリスのどれかを14日投与する。
性器ヘルペス
性器ヘルペスはHSV-1(herpes simplex virus-1)またはHSV-2と呼ばれるウイルスの感染症である。HSVは皮膚または粘膜から感染し、神経細胞に潜伏する。疲労、感冒などの免疫能低下時に活性化し皮疹を生じさせる。抗ウイルス薬を使用してもウイルスを根絶することはできず、ウイルスによる発疹症状を軽減させるのみ。疲労などで再発する。
男性では陰茎、亀頭部に小水疱ができ、女性では外陰部に同様の水泡ができる。痛みをともなう。再発のほうが症状が軽い。
性器ヘルペスの感染は直接の接触感染または生活用品などによる間接的な接触感染による。
感染源は他者の感染巣、唾液、涙、子宮頚管分泌液中のウイルス。
診断は、典型例は臨床所見より診断は容易である。
治療は皮疹に対し抗炎症などの処置をおこない、抗ウイルス薬の投薬を行う。抗ヘルペス薬の投与は早期診断し早期に投与するようにする。
尖圭コンジローム
尖圭コンジロームはヒトパピローマウイルス6型と11型による性器周辺に生じた腫瘍のことである。
感染後、数週間から3ヶ月の後陰茎亀頭、冠状溝、包皮、女性では大小陰唇、肛門周囲などにいぼ上の小腫瘍が多発する。腫瘍は先のとがった独特の形。良性の腫瘍であるが、16型、18型、52型、58型のパピローマウイルスに感染した女性の場合、子宮頚部に感染し子宮頚ガンの発生要因になると考えられている。
診断はその形から診断される。
治療は外科切除、電気焼灼、液体窒素による冷凍療法、ブレオマイシン軟膏などが用いられる。
梅毒
梅毒トレポネーマ感染による慢性全身性疾患。感染したことにより発疹を認めるものを顕性梅毒、認めないものを潜伏梅毒という。また不顕性感染もある。
梅毒の病期は1から4期まで分けられているが3,4期を見ることはほとんどない。
1期では、感染後3週間ころにトレポネーマが侵入した局所に初期硬結と呼ばれる丘疹が生じ、速やかに硬性下疳と呼ばれる潰瘍に進展する。リンパ節腫脹を併発するのが普通。これらの病変は数週間で消失する。
2期では、感染後3ヶ月ころからトレポネーマが血行性に全身に広がり2期梅毒疹が出現する。梅毒性バラ疹、丘疹、膿疱は全身性に出現するが、特にバラ疹は掌蹠で発見しやすい。また陰嚢、陰唇、肛門周囲に扁平コンジローマと呼ばれる変化が見られ、口腔内、咽頭に粘膜疹も出現しやすい。梅毒性脱毛では頭毛が不整に抜ける。
診断はほとんどの患者が潜伏梅毒で、献血時や検診時などの血液検査で偶然発見されるため、トレポネーマを直接検出することはほとんどない。
梅毒血清反応検査は、脂質抗原法とTp抗原法の2種類がある。
脂質抗原法は通常STSと呼ばれるが、ガラス版法、RPR法、梅毒凝集法などがある。梅毒に感染すると陽性になり、治癒すると陰性になるがいくつかの疾患では梅毒でなくても陽性と反応が出ることがある。
Tp抗原法ではFTA-ABS法またはTPHA法がある。この検査では梅毒に感染ししばらくしてから陽性の結果となり、梅毒治癒後もこの検査は陽性のままである。
陽性、陰性だけの定性検査では診断、治癒判定が十分できないので、抗体価と呼ばれる希釈を元に測られる数字を用いる。治療の対象になるのは
- 1. 1期、2期梅毒
- 2. 2潜伏梅毒で中等度異常の抗体価(STSで16から34倍以上、TPHAで1280倍以上)をしめす場合
- 3. 心臓、血管、神経系に梅毒症状が認められる場合
- 4. 再感染により抗体価が数段上昇してきた場合
治療は耐性Tpの報告はないため、有効な抗生剤を規定の期間十分な量投与することである。
治癒の判定については、簡易明瞭な治癒の判定基準はない。そのため治癒の判断に迷う場合が時に見られる。それは治療によってもSTSの抗体価が陽性で残る場合があるからである。治療効果の判定はSTSの抗体価の1/4以上の低下を指標にする。十分な量の薬を必要な期間投与すれば、耐性菌もないため、再発は起こらないと考えられる。
ケジラミ症
不潔な性行為で感染する毛ジラミ(1ミリ強のサイズ、カニのごとく外観)の寄生による。
かゆみが激しく時にかくことで湿疹をおこす。
診断は顕微鏡検査で虫体や卵を確認するが、よく観察すると肉眼でも発見できる。
治療はスミスリンパウダーの塗布。
HIV感染症/エイズ
エイズを発症する原因のウイルス、HIV(human immunodeficiency virus)の感染症。HIV感染症という慢性ウイルス疾患の終末像が後天性免疫不全症候群(エイズAIDS)である。
現在、日本では性行為による感染が増加。先進国で感染者の右肩上がりの増加を示しているのは珍しいそうである。数十年後の爆発的増加が心配される。
HIVウイルスは感染直後から増殖を続け、CD4と呼ばれるリンパ球に次々感染し破壊してゆく。感染者はCD4を増産するようにするが、ついに産生追いつかずCD4リンパ球数の低下をきたすようになる。そして免疫不全状態となる。
治療は抗HIV薬を正しく使用し血液中のウイルス量を低下させることである。これにより病期の進行を抑える。
診断にはHIV抗体陽性を証明すればよい。
スクリーニング検査としてPA法やEIA法を用い、陽性なら確認検査としてWB法を行う。
感染直後にはウイルスは検出できない。そのため感染する機会直後の献血は絶対に行ってはならない。感染が疑われたら数週間(6〜16週)あけた後での検査が望ましい。
膣トリコモナス症
トリコモナス原虫の感染。
男性では尿道炎を起こすこともあるが、無症状のことが多い。
女性では20〜50%が無症状であるが症状として泡上で悪臭の強い帯下の増加と外陰、膣の刺激、強いかゆみ。
診断は運動するトリコモナス原虫を見つけること。
治療はメトロニダゾール1回250mg1日2回を10日間投与する。
性器伝染性軟属腫
伝染性軟属腫ウイルスによる隆起性皮膚疾患。幼児、学童で水いぼとされるもの。STDとして感染したり、エイズの症状として発症することがある。
治療は特有のピンセットでつまんでとるのが合理的である。
肝炎
A型肝炎
通常経口感染する肝炎であるが。同性愛者などで流行する。
症状治療は肝炎による。
B型肝炎
性行為により感染することは知られている。筆者も受け持ち患者の経験がある。
C型、G型肝炎
HCV、HGVによる肝炎もSTDでの感染がある。
細菌性膣炎
膣内で各種細菌が増殖して起こる
性器カンジダ症
カンジダ属による性器の感染症。女性では膣炎、外陰炎。男性では少ないが亀頭炎を起こすことがある。
女性では外陰や膣の掻痒感と帯下の増加。
診断はカンジダの証明。
赤痢アメーバ症
発展途上国に多い疾患だが、わが国では男性同性愛者にSTDとして流行することがある。
